深澤直人 ありそうでないもの展。

ワタリウムの一階と地下にあるショップオンサンデーズで行われている展覧会。
深澤直人は、今一番注目されているデザイナーの一人と言えるだろう。
彼の作品は、ミニマルな形態をしたものがほとんどで、一見ただけでは、今はやりのデザインをする人だと思ってしまうかもしれない。
しかし、彼の作品の特徴は、視覚的な形態にあるのではない。彼が、デザインする際に注意を払っているのは、そのプロダクトを使う人が、何を感じるのか、使う人の生活の中で、どのように使われ得るのかということである。
深澤は、デザインをするために、人の行動を注意深く観察している。そして、日常の中にある、あたりまえに行われている、常識といった行為を、再発見しデザインに生かすのである。
この展覧会では、彼がデザインした様々なプロダクトを実際に見ることができる。±0シリーズ、INFOBARなど、主要な作品は、全て展示されているといっても良いだろう。地下には、深澤自身が撮影したスナップ写真も展示されている。
これらの写真は、深澤によって発見された、日常風景の中の一コマで、全てにタイトルが付けられている。それらのタイトルは、深澤の視点を、写真から読みとる助けをしてくれる。これらの写真は、単に趣味として撮られたモノではなく、深澤のデザインプロセスの中の一つと言えるだろう。
この観察を重視する方法は、深澤が、独立前に所属していた会社、IDEOでの経験に寄るところが大きいのではないかと思われる。Ideoのデザイン方法は、『発想する会社』という書籍に詳しく書かれているが、とにかく、絵を描き出す前に、徹底的に、対象となるプロダクトを使う人を観察する。そこで、見つけたものを形に落としこんでいく、という作業をするのである。

彼の作品は、実際に使われることを想定して、作られているため、見た瞬間にその特徴やすばらしさが分かるものではないかもしれない。
しかし、作品と同時に、彼の思考やプロセスもかいま見ることができる、興味深い展覧会ではないかと思う。