安曇野ちひろ美術館のルーバー天井


先日、安曇野ちひろ美術館に行って来ました。
長野県にある、いわさきちひろの絵画を展示する美術館です。
広大な自然の中にある美術館で、建物の持つ雰囲気もよく、
いわさきちひろの絵画との相性も良かったと思います。
そんなふうに、内藤廣の作ったスペースに感心しながら、
美術館の写真をたくさんとってきました。
今日は、そこで写した写真を見返していて考えたことについてのお話。

たくさんとった写真の中で僕が気になったものは、この一枚です。

子供が、美術館内に、設置された楽器で遊んでいる風景写真。
この写真を見ていると、ここに写された空間の涼しげな感じが、
なんとも心地よくよみがえってきます。

この写真を見ていて
僕が考えたのは、その涼しさが何に起因しているかということなのです。
この空間を構成する要素のうち、なにが涼しさを感じさせているのでしょうか?

そんなふうに、自問しながら、ぼんやり写真を見ていました。
しばらくすると、この床に、うつる陰が、キーになっていることに気付きました。
完全に、日影になるのではなく、また光をがあたるのでもない、
この木漏れ日のような影が涼しさを感じさせる原因だと思ったのです。

では、この実体のない影は何によって生み出されているのでしょう。
それは、写真に写っていないルーバー屋根によって生み出されています。
完全に光を遮らないように、
格子状に作られた屋根がこの木漏れ日のような影を生み出しているのです。
結果、床にうつった影が涼しさを感じさせるのです。

ルーバー屋根の形態は、モノとして視覚的に決定されたのではなく、
影を作り出す装置として考えられたと見ることができるのです。

涼しさ→影→ルーバー屋根。
この見方は、このルーバー天井だけに当てはまるモノではありません。
より幅広く、この視点でものを見ることが可能だと思います。
絵画、彫刻にもあてはめる事ができるでしょう。
描かれた、物体の大きさ、画面の中の位置、色、素材、筆のタッチ・・・・
構成されている、要素ごとに分けてみることで、
その原因となるものを把握できると思います。

そんな見方ができるようになれば、
それを自分がなにかを作る際にいかすことができるのではないでしょうか。
それはモノを通して、人に感情を伝達する能力です、
そんな能力を持った人がアーティストだと思うのです。