受験生の描く絵は芸術か。

定期購読をしている美術手帖をパラパラめくっていると、
興味を引かれるタイトルが目に入ってきました。

「受験生の描く絵は芸術か。」

これは、第十三回芸術評論の佳作に選ばれた作品のタイトルです。
筆者は、荒木慎也という方。東大の博士課程に在籍しています。

過去の記事で、アートとは何か。
またアートの言葉の定義について、疑問を投げかけてきました。
この論文もアートについて考える議題を提供してくれるのではないか。そう思い、
読み進めました。

最初に、内容を少し紹介しておきます。
この論文の研究対象は、東京芸大の入試をめぐる社会的動向を主題としています。
芸術という、答えのないモノに点数をつけて合否を判断する。
そんな美大受験に対する疑問は誰もが抱くかもしれません。
そんな疑問点を出発点として、著者は東京芸大を対象とし、
予備校関係者、大学関係者、学生、様々な人たちにインタビューを試み、分析をしています。

読んでいて印象に残っているのは、
90年代の油絵学科の試験会場が無法地帯になったときに受かった学生へのインタビュー。
当時の受験生は、香水でキャンバスに匂いをつける作品だとか、
ゼリーでペインティングするとか何でもありだったらしい。
また、講師が、アクリル板をハンズで買ってきてつかえとか、
マニアな講師が裏テクニックで受からせたりするとか・・・。

作品制作が受験科目になっている以上、
それに対する傾向と対策が出てくるのは免れないわけで、
そして予備校は受からせようと必死になる。
その結果、生み出された作品は、芸術なのでしょうか?
ただ、芸大に受かるためだけを目的としたオブジェクトなのでしょうか?
芸術は、どの時代においても、社会と共にあります。
そんな視点で考えてみると答えにちかづけるかもしれません。