ハンス・ヨーゼフソンの美術館(経験するということ)


前回、建築家ピーター・マークリの建物のかけらに記憶が埋め込まれている。
という話しをしました。
今回は、それに関連して、ピーター・マークリが設計した美術館を紹介します。

この美術館がたっているのは、
スイスの南部にある田舎町ジョルニコという場所です。
スイス観光に訪れても、普通の人はめったに訪れる事はない場所でしょう。
そんなところに、この美術館はあります。
なぜ、この美術館が、こんな田舎に建てられたのか?
僕は、ここを訪れるときに、そんなことを考えました。

この、美術館にはいるには、
まず町に一個しかないカフェにいって鍵を借りてこなくてはなりません。
そこで、鍵を借りて、街の中を歩いて行きます。
町には、歴史を感じさせる石造の建物や橋があります。
そこを、15分ほど歩いて、ぬけると建物に辿り着きます。

ここで、僕は、また考えました。
上の経験は、建物を見る際に影響を与えているのかということを。
建物の設計というと、建物だけを自立して考えがちですが、
この美術館では、町で鍵を借りるというプロセス。
田舎町を歩いて美術館に辿り着くというプロセスも建物の一部として考えられていると思うのです。
田舎の町外れにあり自分で鍵を借りて、自分であける美術館。
そんな経験が、建物に神秘的な価値観を与えているように思えるのです。
以前の記事で作品とバックグラウンドの関係について書きましたが、
建物においても同じ事が言えるのです。
建物において背景となるのは、都市でしょう。

そんな視点で建物を見てみてはいかがですか?自分の家がたっている環境。
そこに着目してみると、新たな視点が得られるかもしれません。

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Approximations: The Architecture of Peter Märkli

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